2階から4階のスペースにはミシンが並びます。
同じミシンばかりが何台もあるのではなく、
目的別に多種多様なミシンがあります。
これまで色々な工房の中を見させていただきましたが、
一つのメーカーがこれだけの種類のミシンを揃えているのを見たのは、
池田工芸がはじめてです。
それは、多くのメーカーが「バッグをつくる」「財布を作る」といった
何を作るかという視点で工房を持つのに対して、池田工芸は
「どうやったらクロコダイルを素敵な作品に育てられるか」という、
素材を活かすためにどうすればよいかを考えて
工房を設計したからではないかと感じました。
ミシンでもう一つ驚いたのが、縫い糸の色の種類の多さ。
縫い糸は革の色に合わせるので、
当然数色は用意してあるべきものではありますが、
池田工芸の場合は何十色にも及びます。
クロコダイルの革は個体差が大きく、
素材そのものが1点ものだと言われます。
斑の入り方もそうですが、染色した際の色の出方についてもそうだと言います。
クロコダイル専門の工房だからこそ、
そうした繊細な色の違いに対応するために、
これだけたくさんの縫い糸を用意しているのでしょう。
何年にも渡って一枚一枚のクロコダイルの革の、
細やかな色の違いを見分けてきた職人は迷いなく糸を選びとっていきます。
作業台に並べられたハサミやペンチ、錐(キリ)。
勝手を知らない人から見れば雑然としている様に見えて、
それらを使う職人にとってはとても合理的で、あるべき形。
作業をする職人は一度も手を止める事なく、
工具をなめらかに使いこなしていました。
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